■京提灯「小嶋商店」を通して見えた「和こころ」

只の灯りが提灯になると神様に捧げる光になります。
暗闇をなくすように煌々と光る灯りではなく、暗闇を前提とした灯り。

暗闇の中にふんわりと拡がる優しい灯りは同じ灯りでも全く違う感覚を呼び起こします。

創業から200年以上、京都の伝統的な京・地張り提灯の製法を引き継ぐ老舗、小嶋商店。江戸時代からの伝統の技術を守り続ける親子三代の絆の中に、「和こころ」が見えました。


■ひとりひとりの物語

小嶋商店は親子三代で力を合わせて作業をしています。

工房でみんなの作業を見守り、とても穏やかな雰囲気の大親方は小嶋商店の改革者です。
小嶋商店は元は提灯の卸でした。提灯職人の減少に伴い、大親方の時代に技術を習得し、
一時は全てを一人でこなしていた職人気質の方です。
実は、大親方は若いころは日本のトップクラスの水球の選手として活躍されていました。
京都の水泳協会の理事をしていたとのこと。
現場は引退した者の、ただいるだけで安心できるという存在感は納得です。


その技術を引継いだ親方も一時は全てを一人でこなしていました。

大親方は無口な方で、教えてもらうというより、見て盗むというスタイルで技術を身につけてきたそうです。
現在は息子二人を提灯職人として育てつつ、最終仕上げの絵付け部分を主に担当されています。
京都の南座の提灯を任される等、京都では一目置かれる存在です。

「息子たちと一緒に提灯を作れるのが一番の幸せです。」という親方はとても穏やかで師匠と弟子という関係とは一味違った絆を感じます。
今後の小嶋商店を背負うのは、小さいころから工房が遊び場だったという二人の兄弟。
それぞれの特性を生かし、合作で提灯の制作をされています。

親方の倍の速さで竹を割るという兄の俊さん。
「提灯ってカッコいいじゃないですか。がっつりしてて強そうで、ごつごつしていて武骨で男らしい」と話している姿はとても印象的でした。
親方がどこに出しても恥ずかしくないという美しい紙張りの技術を習得したのは弟の諒さん。
骨を均等な幅で固定するために絶妙な力で糸を張り、その上から和紙を張り付けていきます。

納期の管理から職人さんたちの作業状況の把握まで、細かい気配りで仕事を回しています。

兄が材料となる竹を作り、弟がその材料を組合せて土台をつくり、父が仕上げの絵付けを行う。
それらの工程を祖父が見守ることで親子三代での合作としての提灯が出来上がります。
師弟関係ではない、親子ならではの絆が創りあげる作品には、工業製品とは違った手作りの温かさが詰まっています。


■提灯職人は縁の下の力持ち!?

「多くの仕事は提灯屋さんからの依頼のため、表に出るのは提灯屋の名前。私たち職人の仕事は名前は出ないんです。ビニール製の提灯が増えている中、しっかり作ればこの製法でも十分丈夫で長持ちするものができあがります。そんな土台としての役割を担っているのが私たちだと思っています。

色んなものが「京もの」と言われていますが、提灯もその一つとして認識されることを目標にしています。」


■小嶋商店の「志」

「本来、手がかかるから避けていきたいところを、自分たちは避けない。大切に使ってくれる人がいるから、下手なものは出さない。
だから手は抜かない。目指すのは「提灯は京もの」と言われること。
私たちは提灯を売っているのではないんです。和の心、技を売っているという感覚で仕事をしています。

富士山は日本一の山です。その富士山はどこまでも続く広い裾野が土台になっています。
時間がかかっても構わない。しっかりとした土台を作ってから一段ずつ踏みしめながら階段を上がり、日本一の提灯屋になる。それが私たちの志です。」


■時代に合わせた取組み

「提灯は祭りごとが無くならない限り無くなりません。
そうした古来からの提灯だけではなく、私たちの技術を活用した新しい取組として、江戸時代から続く滋賀県の祭り「蛇おどり」の蛇を提灯の製法で作ったり、インテリアとしての灯りを提灯で提案しています。
琳派400周年記念事業のプロジェクトに参画して制作した提灯は、京都駅やイタリアで展示もされています。
国内だけではなく、海外からの発注も増えてきています。
こうしたいろんな新しいことに挑戦するのも楽しみの一つです。」

単なるライトとしてではなく、「夜を楽しむ」という視点で考えると、提灯の灯りはゲストのおもてなしで利用するなど、和のイメージを持った素敵なアイテムになるかもしれません。

最近では、「ちび丸」というミニ提灯づくりのワークショップが若い女性に人気だです。京都にお越しの際は、親子三代の想いが詰まった提灯づくりを体験してみてはいかがでしょう?


■取材を終えて

小嶋商店の魅力は親子三代という点。工房はとても和やかなムードで包まれています。
素材作りと仕上げ前までは俊さん諒さんの兄弟の連携。最後の仕上げは親方が担当。それをあたたかく見守る大親方。
雑談をしながらも眼は常に真剣。お互いを信頼し合っているというのを肌で感じます。
お手伝いで来ているのは近所の方々。陰ながらとても大きな支えになっている奥様の存在も忘れてはいけません。

興味深かったのは小嶋商店の提灯づくりに対する考え方がぶつかり、家族間で「やってられへん!もう辞める!!」という話にまでなるそうです。
でも、それは信頼し合っているからこそ。受け継いできたものを守ろうとする親方(父)、これからの時代に向けて新しい試みをしようとする兄弟、それぞれが本気で仕事に向き合っているという証拠なんだと思います。
引き継いでいる伝統は同じでも、考え方は様々です。
本気で考えているから思いっきりぶつかれるし、ぶつかった後に許し合うことができる。それだけの気持ちで取り組むからこそ、価値のあるものを生み出すことができる。

仕事というものの原点を感じるとともに、そんな仕事の仕方が羨ましいと思えるほど、みなさんの絆の強さを感じました。

■紹介
小嶋商店(Kojima Shouten)

親子三代で江戸時代から続く伝統的な京地張り提灯の制作を行っています。
一本の竹から竹を薄く割っていき(平骨)、一本ずつ輪にしたものに麻糸をしっかりと縦にくくりつける「糸つり」という京提灯独特の技法が特徴です。
「糸つり」を行うことで、一本の竹ひごをらせん状に巻いて作る「巻骨式」に比べ、大変、丈夫で堂々とした風合いに仕上がります。
京都南座の大提灯を始め、宿泊施設や寺院の提灯の制作を受けつつ、京の地張り提灯の技術を活かしたインテリア等、新しい取組も実施しています。→制作事例
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