■鬼太鼓座を通して見えた「和こころ」

秩父で共同生活を送る創作和太鼓集団「鬼太鼓座(おんでこざ)」を訪ねた。
共同生活の中で培われる感覚が演奏に生きてくる。
ショービジネスで有名になる「夢」ではなく、太鼓にこめた「志」を貫き通す人たちの姿勢を体験してきました。

■魂の波動が伝わる「和太鼓」

間近で和太鼓(大太鼓)を体験したことはありますか?
ものすごい大音量、身体の芯に響く空気の振動、言葉では説明のできない圧倒的な迫力。でも、気持ち良いんです。素直な感想は「なんじゃこりゃー???」です。練習でこれなら本番はどんなだ??


■42.195km+和太鼓

鬼太鼓座が有名になったのは1975年。
ボストンマラソンに参加した座員が、42.195km完走後に全力で大太鼓を叩くというパフォーマンスがきっかけで、世界に日本の太鼓が知られることになりました。ストリートチルドレンと一緒に楽器を作って打ち解けたり、軍隊に護衛されながらの公演をしたり、「鬼太鼓座の旅は地球の夢」というテーマで世界中を公演して回る、頭ではなく、実体験を通して感じることをベースに活動を続けるとても魅力的な方々です。


■そんな鬼太鼓座の「志」

代表の松田惺山氏「太鼓は原始的な楽器で、ただやるだけでは本当にうるさいだけのつまらないものなんです。
鬼太鼓座はそれを超越しなければ存在価値のない存在だと思っています。
和太鼓はそもそも寺社仏閣、郷土芸能で使われていた芸能でした。そんな太鼓をデフォルメして舞台表現として展開し始めたのが鬼太鼓座です。

ボストンマラソンで世界的に認知され、ワールドミュージックとしてビジネスなったため、たくさんの和太鼓パフォーマンス集団が出てきました。
でも、鬼太鼓座は独自路線を突き進んできました。

ショービジネスとしてスターになることよりも、太鼓で私たちの思う「和の心」を伝えることを優先してきました。


ボストンシンフォニーとの共演でも、一発音を出しただけで楽員がみんな耳を塞いでしまいました。でも、うるさいんだけど音楽家だったら影響を受けるような音の響きがあるんです。皮膚感覚から入ってくる日本的なサウンド。オーケストラもそれを理解したんだと思います。自分のエネルギーを太鼓にぶつけて音として届ける。

その覚悟が志があれば、理解してくれる人は必ずいます。

一音成仏という考え方。自身の信念をこめて音を出す。きれいな音楽ではなく、魂の波動を伝える音楽。その気持ちが観客の心を動かすんです。演奏を聴いた人たちが「なんだこの振動は波動は??」と感じて鳥肌が立つ。表現に対してこだわりのある人たちには伝わるものがあるんです。これが無くなったら鬼太鼓座は鬼太鼓座ではなくなると思っています。聴いて感じて理解してくれる人達がつながってくれることが私たちの原動力になっています。鬼太鼓座が伝えるべきことは、日本人が地球をどう理解しているか。それをホールでもどこでも伝えていく。アジアを含めて世界を旅した鬼太鼓座として、2014年あぜ道回帰で原点に戻り、もう一度踏み出すところです。


ここを出発点として日本人の考え方を持って、鬼太鼓座50周年となる2020年、東京オリンピックをきっかけに地球巡礼の旅に出ます。数百万人、数千万人に受ける音楽を作るのではなく、少数でも本当に理解してくれる人たちを大切にし、その人たちとつながる。心の交流を最大の価値として世界中を回り、日本人としての誇りと太鼓に懸ける「志」を世界に伝えていく。そこで得られる何事にも替え難い経験を、鬼太鼓座の物語として語り継いでいく。それが鬼太鼓座の文化となり、代々引き継がれていくんだと思いました。


■取材を終えて

団員の方々に「何故鬼太鼓座なのか?」と質問してみました。
「初めて鬼太鼓座を見た時、その迫力に圧倒されました。感想は“何じゃこりゃあ???”でした。言葉では上手く伝えられないんです。その“何じゃこりゃあ???”を自分も観客に届けたいんです。」
音頭取の松田さんは、鬼太鼓座が届けるのは「太鼓の演奏」ではなく「魂の波動」だと言います。私たちが立ち会えたのは20分間打ち続ける練習でした。
太鼓から2M程度の距離でその音を体験しました。
もの凄い爆音で鼓膜には厳しいですが、身体の芯に響く感覚はとても心地よく、心が洗われる気がしました。
鬼太鼓座は昨年「あぜ道回帰」というテーマで、ホールではなく、野外で太鼓を打つことをしてきました。

世界中を回った時にも、太鼓の音に合わせて子供たちが踊り出すそうです。
言葉は通じなくても、太鼓に乗せた想いが通じ、コミュニケーションが成立する。
ヨーロッパでは、最初の演奏でうるさ過ぎて共演したオーケストラの人たちが耳を塞いだそうです。でも、その迫力が伝わったからか、翌日のトレーニングに参加する人が現れたそうです。

ただ単に世界で公演をするわけではない。それぞれの地域に入り込み、現地の人たちと太鼓を通じてコミュニケーションをする。それだけの想いを持っているからこそ、観客の心に残る演奏が実現し、公演の数だけ物語が生まれるんじゃないかと思います。鬼太鼓座の実体験に基づいた世界行脚の話がとても興味深く感じる理由がそこにある気がしました。私たちの仕事の中でも、ただモノを売るんじゃない。サービスを提供する先に何があるのか?
改めて考える機会になった取材でした。

■鬼太鼓座(おんでこざ)

鬼太鼓座は1969年、故田耕(でん たがやす)の構想のもとに集まった若者達により佐渡で結成。

その活動の根源にあるのが、「走ることと音楽とは一体であり、それは人生のドラマとエネルギーの反映だ」という「走楽論」である。

富士山麓・和紙の里東秩父村・会津村と、3カ所の鬼太鼓座合宿所にて、毎朝6時からの10kmランニングに始まる合宿生活を送っている。

また2006年からは「ミュージック&リズムス」と題した活動を開始。竹を利用して創作楽器を作る等、和太鼓のみにとらわれない表現の可能性を追求しながら、「音楽体験を通じて世界中の子供達をつなぐ」試みを行っている。

■紹介

松田惺山(Seizan Matsuda)

尺八演奏家 / 鬼太鼓座 音頭取 / NPO法人ミュージック&リズムス 理事長 / NPO法人バンブーオーケストラ 理事

東京芸術大学音楽学部邦楽科卒業。同大学院音楽研究科修了。
鬼太鼓座・Bamboo Orchestraを軸に、子供達との竹楽器作りワークショップ・演奏を行う企画[ミュージック&リズムス]を世界各地で展開。
日本の文化・日本の音を国内外問わず地球全体へ届け、エンタテインメントを超越し無名性が原則の表現を追求している。
「粛々と生命(いのち)吹き鳴らす」を信条とする。
鬼太鼓座公式WEBサイト(日本語)

ONDEKOZA official WEBsite(English)